2015年1月25日日曜日

中国雲南省西双版纳の熱帯雨林で6日間の風景ポートレート撮影ワークショップに参加 - Portrait Workshop in Xishuangbanna, China


中国語の学習と、写真撮影、ぼくのふたつの関心事に同時にとりくめる方法をみつけてしまった。中国語による写真撮影のワークショップだ。中国のネットを見ていて、POCO.CNという団体が意欲的なワークショップを企画し、参加者を募っていることを知った。行くしかないでしょ!というわけで、年末年始中国雲南省・西双版納(シーサンバンナ)の勐臘(モンラー)県に行き、日本語に訳すと「原始热带雨林を探る・雲南西双版纳6日間風景ポートレート撮影グループ」なるワークショップに参加してきました。
(詳細はこちら:http://photo.poco.cn/youxue/detail.php?youxue_id=123)。
ワークショップにはひとりで行くのだが、妻も海外旅行を楽しみにしているので、冬休みをながめにもらい、クリスマスイブにカンボジアのアンコールワット遺跡群とプノンペンを6日間見学したあと(詳細は別に書くつもり)、12月30日にひとりで広州経由で雲南省昆明市に移動した。
昆明についてから、カメラの充電器をカンボジアの宿泊先に忘れたことに気づいて大汗。すぐにワークショップ・リーダーの适(シュー)先生にSNSで相談したところ、昆明在住の知り合いに頼んで入手し、目的地まで届けてくれるという。デジカメは電池が切れれば役に立たないから、すがる気持ちでお願いする。
第一日目(12月30日)
昆明の空港近くの宿で一泊したあと、再度空路で雲南省の南部にある景洪(ジンホン)に入ります。中国とはいっても、内陸部最南端のこのあたりはメコン川の上流であり、東南アジアにつながる熱帯地域だ。大地は一面みどりの樹木に覆われ、空は青く晴れ渡り、街の雰囲気も南国らしい。気温は日中が摂氏26度前後、早朝でも14度前後だ。ツアーの集合場所である金地大酒店というホテルにチェックインしてから、市内をぶらついて、ほかの参加者の到着を待つ。景洪でもカメラ屋さんをまわってカメラの充電器を探してみるが、充電器どころか、一眼レフは入門機がわずかにあるのみ。ひとしきり回って婚礼写真のスタジオをみつけたので、プロのカメラマンに尋ねてみたところ、景洪にフルサイズの一眼レフやアクセサリーを扱う店はないと断言されてしまった。やはり充電器は、适(シュー)先生のお友達に頼るしかない。
午後6時になると、ワークショップのシュー先生や、ほかのメンバーたちと無事に合流できた。お金をはらった参加者は総勢12名。うち、外国からの参加者は日本人である私が一名、台湾人のリャオさんが一名、ニューヨーク在住の呉さんひとりでした。私以外はすべて華人であり、そもそもPOCO.CNが中国語のサイト・団体なので、会話は当然ながらすべて中国語だ。英語を話す人は、呉さんひとりのみ。私の中国語は、まだまだ流暢ではないが、長年の努力でだいたいの会話にはついていけるか、わからなくても聞き返せばなんとかなるようになった。中国語話者向けのアクティヴィティに参加できるようになったのが、すごくうれしい。
中国国内の参加者は、天津から小さい男の子をつれた夫婦一組、広州の若い女性ひとり、香港からひとり、四川省成都ひとり、それ以外は、すべて雲南省昆明からの参加だ。

ツアー参加料金は現地集合・解散で4200元。いつも東京でいっしょに撮影している中国人の友達に日本円を払い、立て替えてもらった。全行程の移動手段、5泊6日の宿泊、毎日三度の食事、同行する先生方、モデルさん3名、スタイリスト1名、ドライバー、ボランティアの助手たちと、ときどき登場してもらう現地少数民族のモデルさんなどの費用が、すべて含まれている。日本では到底考えられない濃い内容で、個人的には中国語のトレーニングも兼ねていると考えると、まちがいなく価値のある出費だ。
ツアーは一旦集合すると、3台のSUVに分乗して、現地タイ族のレストランに向かう。おいしい御当地料理を肴に、各人が自己紹介をして、親睦を深めた。日本から参加していることもみなが歓迎してくれて、少しほっとする。参加者のなかには撮影旅行などで日本を訪れたことがあるひとが二人、娘を留学させたことのある人が一人いた。
カンボジアの滞在中に胃腸の調子が少しわるくなっていたが、ニューヨークから広州に里帰りしたついでに参加している呉女史がPepto Bismolのピンク色の錠剤をくれたおかげで、一晩で全快した。充電器のことといい、ツアーの始まりから、何人もの中国人に助けられており、感謝に絶えない。
第2日目(12月31日大晦日)
景洪(ジンホン)から3台の車で、ラオス国境方面に2時間運転し、勐臘県にある望天樹(ワンティェンシュー、英名:SkyTree)という、熱帯雨林と中国タイ族の文化的中心というエリアの宿泊施設にチェックインする。日本でいう国民宿舎みたいな(とはいっても泊まったことがないが)感じの宿で、大きな半野外レストランと、イベントスペースがあります。部屋のシャワーのお湯の出がわるいことと、シャワー室の床に穴が空いていることをのぞけば、おおむね快適。なによりも、気温と空気がよく、WiFiが機能していて、食事がおいしい。
 














チェックインして昼食をすませると、ときに高さが84メートルに達するという望天樹という樹木が伐採されずに残っている公園に移動し、樹間にかけられた吊り橋を渡り歩いた。


樹をおりて熱帯雨林の茂みのような場所におりると、なんとそこに孔雀が放たれており、映画用のライティングが設置されている。今日はここで撮影だそうだ。ひと息ついていると、なんと孔雀色にメークした美しいモデルさんが登場して、孔雀の横にポーズをとる。この時点で、場景、モデルさんの美しさ、コスチュームとメークの質に完全に打ちのめされた。企画のページにもよい写真はあったが、まさか初日からこのようなセッティングが森のなかに準備されているとは。



東京でもこの1年ばかり、野外ロケや、スタジオで人物を撮影していますが、プロのモデルとメークさん、服装の専門家、ライティングに詳しい人が、すべて協力する撮影に立ち会うのははじめてで、そのクオリティーには大いに感激すると同時に、学ぶことが多かった。映画撮影用の大型定常光の照明があり、煙幕まで焚かれるシーンに、夢中になってシャッターを押した。
2014年の大晦日である本日の夕食は、宿泊施設の野外ダイニングスペースで、タイ族のシュウェーイ、シュウェーイという掛け声を繰り返す乾杯の挨拶で新年を迎えた。酒を飲めないぼくであるが、同行の中国人にも飲めない人が何人かいて、気後れしないで楽しむことができた。白酒の盃にスプライトを入れて、乾杯以外のときはお茶で楽しんだ。盃を飲み干すと給仕が白酒を注いでしまう。一度気付かずに口に入れて吹き出したが、だれも咎める人はいない。料理は新鮮な地元の野菜や肉、山菜なども入り、ほんとうにおいしい。



第3日目(1月1日元旦)
撮影二日目は、宿泊施設の目の前にある桟橋から、霧の出ている湖水に筏(いかだ)を浮かべ、モデルさんには筏のうえに立ってもらう。カメラマンは船から湖面のモデルさんを撮影するという、これまた大掛かりな設定。
この日は発動機が不調で、映画用の定常光がつかえないため、自然光のみでの撮影となった。そのかわり、ライトとの位置関係に束縛がなくなったため、船と筏(いかだ)は湖面を自由に動いて撮影できる。
Nikon D800のレンズは、18-35mm、50mm、90mmしか持って行かなかったため、船と筏のあいだに距離があるときは画作りに苦労したが、下のような画が撮れた。



左端がシュー先生
ランチ後、シュー先生の友人の伊さんが、ぼくの充電器を持ってきてくれた。中古の充電器だが、まったく問題なく、ありがたく受け取る。これで電池がなくならないように控えめに撮影する心配もなくなった。感謝。中国人は、やる気になるとネットワークを利用してすごい力を発揮してくれる。そもそもこのワークショップ自体が、写真撮影愛好家の情熱と行動力によってなりたっている。やる気と行動力に万歳だ。

午後は、ラオスとの国境までいって、中国側の国境は出るが、ラオスには入境しないで戻ってくる、という国境観光を実行。ラオスからみると、インフラ、資金、技術、制度まで、いろいろな面で中国のほうが先進国であることが感じられた。

その後、近隣のタイ族風リゾートに寄って、休憩。

台湾の廖(リャオ)さん(右上)撮影

夜は、宿泊した施設でキャンプファイアーとバーベキュー。地元タイ族の人たちといっしょに踊る。ぼくはその様子を撮影。






第4日目(1月2日)
撮影三日目は、タイ族集落の裏山の滝の前での撮影するという、これまた野趣あふれる企画。かろうじて登れる程度の路を登っていくと、滝(たき)が何段もが連続する場所に出る。われわれ以外はだれも来ていない、大自然の中だ。
悪路を車で出発すると、タイ族の地元の武装警察官が6人程度で焚き火をしている場所に到着。なんと、警察官たちは焚き火をしているのではなく、我々のために子豚の丸焼きなど、本格的な野外料理を作っている模様。午前中に撮影しているあいだに料理はできあがり、なんとも豪快な昼食を、水のほとりで楽しんだ。



滝での撮影では、水の流れを表現するためには三脚をたててスローシャッターにしたい。三脚を担いで登ったのは僕だけで、日本の太郎は真面目だ」と評価される。モデルの小黒(シャオヘイ)が、ヨガのポーズをなんなくキメているの関心し、なかなかない状況に、ただ夢中にシャッターを切る。三脚のおかげでカメラは安定するが、岩場に草が密生していて、人数もいるため撮影場所の確保に難儀する野外ワークショップでは、ズームレンズと一脚が一番便利かな、と頭のなかにメモ。



夜は宿にもどって食事のあと、シュー先生がPhotoshopを使った画像処理について2時間ほど講義してくれた。技術的な単語が多いが、興味のある内容なのでだいたいの内容はわかった。
第5日目(1月3日)
撮影4日目の午前は、ストロボ使いのボランティアサポーターである牛仔(ニウザイ)と、香港籍の不動産業のツァンさん、台湾のリャオさん、モデルの金さんと、少人数で望天树公園に再訪。人数が少ない分、モデルさんには細かいポーズのお願いができる。

午後は、タイ族のもっとも古い村という場所で、野外撮影。同行した3人のモデルさんのほか、現地のタイ族姉妹3人を撮影。ここで、今回の旅行でもっとも心残りな失敗があった。午前中いっぱいかけてスタイリストさんが準備していた同行モデルの二人の撮影を、タイ族の姉妹たちを撮っているあいだに撮り逃がしてしまった。僕だけではなく、多くの参加者が撮り逃がしたようだ。すばらしい場景設定だったので、その場にいた成都出身の勇哥(ヨンガ)が撮った写真を拝借できたら、あとで掲載したい。
その後、タイ族の村の中で機織り工房や、通りを背景に、モデルさん達を撮影。






第6日目(1月4日)
最終日は、午後に景洪空港から帰路につく人が多いため、朝食後に猛拉を出発して景洪に近い中国国家科学院の熱帯植物園を数時間見学して、昼食のあとみなと別れる。
熱帯植物園は、園内に入るとその規模、見事な管理、めずらしい植物の多さにびっくりする。さすが国家指定の5つ星観光施設だ。あまりにも広いため、電気自動車で移動しながら、ガイドさんの説明を受ける。蓮池のまわりに孔雀がはなされていたり、博物館の展示も豊富で興味深く、2時間ではとても回りきれないのだが、たっぷり楽しんだ。


最後はみなでランチをとり、行き先別に車に分乗。昆明行きの4時の飛行機にギリギリ間に合い、5泊6日の雲南撮影旅行をあますことなく楽しんだ満足感を懐に雲南をあとにした。

飛行機は深夜に杭州に着き、空港近くのビジネスホテルで一泊のあと、翌朝山東省の青島を経由して、成田行きの全日空便で2週間ぶりに東京に戻った。

隣国でありながら、コトバもちがい、中国語の勉強をはじめても現地の人と100%同じ立場でワークショップに参加することは、これまでなかった。そういう意味でも、あたらしい撮影の体験を得られたという意味でも、格別な達成感のある旅行だった。これからも積極的に参加したい。